dear_____my_dear          writer:橘忍



 今日という日に感謝する

 この世で一番大切な、奇跡が生まれた一日を



「直江、悪い!待ったかっ?」
「いいえ。先ほど私も着いたところですよ。」

 貴方は私を見つけると、いつも必死で駆けてきてくれる。
 そんな姿が愛おしくて。

「それにしても、熱いな。」
「ええ。すぐ近くに車を止めてあります。行きましょうか。」
「ああ。」

 だからいつも早めに待つ。
 貴方と出会える、この場所で。

「で、今日は一体何の店に連れて行ってくれるんだ?」
「美味い活造りを出す店を見つけたんですよ。少し走りますが、着くころにはちょうど夕食の時間になっているはずです。」
「相変わらず、計画ばっちり立てるよな。お前。」

 そう言って、そっと小さく笑う貴方を見ていたいから。
 何だって、どんなことだってしようと思う。

「当然ですよ。私はいつも、貴方のことばかり考えていますから。高耶さん。」
「・・・恥ずかしいヤツ。」

 悪態をつきながら、心の中では恥ずかしくて、嬉しくて。
 知ってるんですよ。
 貴方は照れると、耳がとっても赤くなる。

「高耶さん・・・。」
「ん、何だ?」

 振り向いて、まっすぐに私を見つめる瞳。
 誰よりも、何よりも孤高で強い意志を持つ光を。
 これからも。
 ずっと。

「今日、どうしても会えたらすぐに言いたくて仕方がない言葉があるんです。聞いていただけますか。」
「あぁ。なんだよ。」

 分かっているのに、そ知らぬふりをする。
 ぶっきらぼうで、純粋で。
 今はただそれが、愛おしい。

「高耶さん。」
「・・・あぁ。」

 誰よりも傷ついているのに、誰よりもまっすぐに立とうとする貴方を。
 誰をも赦し、誰よりも自分を律する貴方を。
 すべてを忘れて。
 今日だけは、私の前で解放して欲しい。



 ―高耶さん

「お誕生日、おめでとうございます。貴方が生を受けたこの日に、心から感謝します。」


 今日という日に感謝する

 この世で一番大切な、奇跡が生まれた一日を

 ただ一途にこうべを垂れる

 ただ一途に、貴方を祈る

 高耶さん

 愛しています

 生まれてきてくれて

 ありがとう、と